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ヴェルボトナル理論のキーワード

聴覚フィードバックと体性感覚フィードバック

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音声増幅フィルター機器

重度の聴覚障害児も、乳児期は健聴児と同じように声を発します。しかし、耳による自声のフィードバックが困難なため、やがて発声量が減少していきます。
健聴児と比較した時、この時点で、言語面の発達に遅れが生じ始めています。発声の面のみならず、言語発達の基礎となる聴き取りの面での遅れが問題となりだします。音声言語習得の危機と言えます。
聴覚にハンディのある子どもの音声言語習得指導プログラムの第一歩は、聴き取りと発声訓練です。聴き取りと発声は連動しています。
重度の場合、耳での聴き取りに代わる感覚経路での音の知覚経路を探らなければなりません。その聴覚外音声知覚経路は身体です。音を身体で感じることを通じて語音の聴き取り能力を向上させる道が残されています。
身体で語音を感じることで発声を育てるのです。発声に伴う運動や言葉のリズムを「身体で覚える」と言ってもよいかと思います。聴覚フィードバックの不足を体性感覚フィードバックで補うとも言えます。

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言葉の身体化

「人間は身体で言葉を覚える」といっても過言ではありません。聴覚障害児の場合は、特に意識的に身体を参画させ、聴き取りと発音の発達、また言葉の発達を促さなければなりません。

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振動板

第一に、母親との身体的接触が重要となります。次いで、自分の音声を自分の身体で感じることが重要となります。身体の深部感覚を通じて自らの音声を感じ取ることが、他者の音声の聴き取りにつながるのです。
発声と発音は聴き取りを基に育つ仕組みになっています。 人間には感情があります。人間の感情の変化は身体の筋感覚に影響を及ぼします。身体の変化は言葉の声の調子の変化として表われます。聴覚情報が少ないと、感情を表現するリズムやイントネーションの習得が極めて困難になります。
聴覚障害児への言葉の指導において重要なことは、言葉と身体と感情が一体となるような指導を展開することです。「身体で覚える」は「身体の運動で覚える」と表現することもできます。人間は様々な感覚を目的に合わせて、感覚の統合を(感覚間の優先順位に従って)無意識に行います。

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言葉と運動

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振動子

人間は、他者の運動を目で追うことで、自らの脳にその運動の状態を知らせ、自らの身体に目の前の人物と同じ運動を起こさせる仕組みになっています。これにはミラーニューロンと呼ばれる神経の働きが関係しています。他者の運動を能動的に観察する時、観察者の脳の中では、運動を行っている者の運動系のニューロンの動きと同じ動きが起こるのです。
このニューロンは、音声の表出に関わるブローカ野に多く認められます。周囲の人たちが発音する際の表情を見て表情を模倣し、身体全体の動きを見てその動きを模倣し、口元の構音運動を見て、構音運動を模倣するのです。
このように人間は視覚や体性感覚によって、発音に関わる自らの運動の様々な情報を脳に伝えていますが、そこには自己受容感覚とよばれる感覚が関与しています。

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自己受容感覚

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身体の運動で構音器官の運動をコントロールすることが可能です。幼児にも容易な、やさしい、粗大な身体や四肢の運動で、構音器官の微細な運動、構音器官の筋肉の緊張と弛緩、また音声のリズムを無理なく修正し、正しい発声、発音を導き出すのです。
この方法は、子どもにとって負担が少ないだけでなく、言葉と身体が一体のものとなり、言葉の身体化にも繋がります。自らの身体の運動や構音器官の運動を自分の身体でモニターし、自らの脳に知らせる感覚を自己受容感覚と言いますが、これは発声、発音、そして発話を習得する上でとても大切な感覚です。重度の聴覚障害を負う子どもにとって、言葉の聴覚イメージを構築する上で欠かせない感覚です。発音訓練は基本的に自己受容感覚を育てることであるとも言えます。

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聴覚イメージ

人間の脳は、自分が発話している時、主に発話に関わるとされるブローカ野のみならず、主に音声の有無やリズムなどの情報処理に関わるとされる一次聴覚野が働いています。
また、他者の話しを聴いている時、聴覚野のみならずブローカ野も働いています。つまり、発音と聴き取りは一体なのです。したがって、発音能力が向上すると、聴き取り能力も向上します。ブローカ野と聴き取り理解に関わるウェルニッケ野は、弓状束でつながっています。聴覚障害児は発音の練習を通じて、聴き取りの基盤を構築するのです。

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前庭感覚と空間感覚

人間は前庭感覚を中心に、視覚、体性感覚、聴覚の感覚で空間感覚というものを作り上げています。この空間感覚に問題が生じると、手足の運動が十分に行えず、言葉に関しても正しい構音運動が行えません。また、相手の言葉を正しく捉えることが難しくなります。

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前庭器官が健全な聴覚障害児は、蝸牛と前庭器官の双方に損傷を受けている聴覚障害児に比べ、聴き取りと発音が練習により急速に改善されます。
前庭器官に損傷のあるケースでは、聴き取りや発音の練習に取り組む前に、器械体操などで前庭感覚を改善させるところから指導に入ることが必要です。聴き取りと発音の訓練に先立つ「身体協調運動」の訓練です。正しい前庭感覚、空間感覚を養うことが、聴き取りと発音能力向上の条件となります。
身体の平衡感覚にやや問題を抱えている聴覚障害児の場合、直立姿勢での身体の筋緊張が正常とは異なることがあり、音声を生み出す筋の緊張や弛緩の部位や程度に問題の生じることがあります。いくら身体運動で音声を修正しようと試みても、運動を生み出す身体の筋緊張に問題があると、発音面での改善が期待できません、発音矯正前に、基本である身体の筋緊張を改善することが必要です。

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前庭感覚と空間感覚

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構音器官の筋緊張は声質や音色に深く関係します。声帯を調節するのは輪状甲状筋や甲状ハレツ筋です。声質には軟口蓋や喉頭が、構音には舌や顎や唇、呼気流などが関係しています。
正しい音声が得られている時、つまり、聴覚的印象による音声の緊張の度合いが正しい時は、構音器官の筋肉の緊張の度合いが正しいと考えられます。構音器官の筋緊張度の高低の調節や、緊張点の移動は、身体運動を通じて行うと容易です。その修正には、感覚系(身体の運動を脳に伝える)神経と運動系(脳から身体や構音器官などの末梢器官に運動命令を出す)神経が深く関与します。
自己受容感覚によって、どのような運動が、つまりどのような緊張や弛緩が正しい発音を生むのかを、子ども自身が確認し、身体で覚えていくことになります。

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緊張度と音声特性

構音の際の身体と構音器官の筋緊張の度合い(緊張度)の高低を知っておくことは大切です。母音と子音の一部を以下に示します。

  母音 両唇音 歯茎音
i u p t
e o b d
a m n

発話の音声面に現れる緊張度は音素、音節のレベルとともに、単語、文節、文章レベルで全体的に評価され、修正されることが求められます。音声の要素には長短(リズム)、高低(イントネーション)、強弱(アクセント)、緩急(テンポ)、休止(ポーズ)などがあります。ヴェルボトナル法では、これらの要素に「音声特性」を付け加えます。聴覚的印象による音の方向、距離、広がり、硬さ、重さ等の音素独自の感覚的な特性です。音声特性に合致した、その子どもに合った最適な運動によって、より自然な言葉を育てていきます。

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最適刺激

ヴェルボトナル法では、「最適刺激」ということを重要視しています。発声、発音の練習においては、子どもに、年齢的にも、知的にも、聴力のレベルにても、発音のレベルにても、最適な刺激を与えてあげなければなりません。
発音に関しては、練習開始時点で既に問題が生じている場合が少なくありません。悪い癖のついた構音運動を正す指導は、誤りの原因を見抜くことから始まります。また、年齢に比して運動面で発達の遅い子どもを見かけることがあります。そのようなケースでは、その点を十分に考慮に入れて、指導のプログラムを組まなければなりません。
リズムやイントネーションなどを含めた全体的な発音と、音素など細部の発音の両方に注意して、常に「最適な刺激」を与える指導に心がけることが大切です。

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